問いを立てる
関心を研究に値するテーマとして落とし込む
自分が関心があるテーマについて、入門書、概説書を乱読していると、大体の勘所がわかってくる。次のステップは、その関心を研究に値するテーマとして落とし込むことである。
そもそも「研究」とはなんだろう? みんながわかっている、言っていることをまとめただけでは「研究」にはならない。みんなが知らないこと、やってみたり調べたりして初めてわかったことでなければ、「研究」とは言えない。それは、偉いセンセイがやる研究だけの話ではなく、初めて論文を書く学生のものであっても、同じである。「新規性」「独自性」があるもの、それが、研究に値するテーマとなる。
論文は論理的でなければならない
研究を、最終的に論文の形でまとめるのがゴールである。論文は、「論理的」でなければならない。
論理的な主張の形は多種多様だが、もっともシンプルな形としては、「三段論法」がある。つまり「A=B ∵C(AはBである。なぜならばCだから)」の形である。
ここから、新規性・独自性がある研究テーマを導き出す例を3つ、以下に述べる。
「A=B∵C」の「A」に着目し「Aとは何か?」をテーマにする
みんなが知らないであろう「対象物」について、論文にするものである。
たとえば、「東京湾上の島に新種の蟹を発見・捕獲した」というようなケースである。その蟹については、誰も知らないわけであるから、その形状や習性などの観察内容には新規性・独自性がある。「東京湾新蟹とは何か?」というようなテーマは、論文として相応しい。
逆に、既に図鑑に載っているようなありふれた生き物の紹介は、小学生の夏休みの自由研究としては許容はされても、大学生の論文にはふさわしくない。まして、参考文献をそのまま引き写すような内容であっては、ならない。
「A=B∵C」の「A=B」に着目し、「Aは本当にBか?」をテーマにする
みんなが常識として疑わないであろう「コモンセンス」あるいは広く知れ渡っている「公知の事実」について、論文にするものである。
たとえば、(高校生が)「三角形の内角の和は本当に180度なのか」「仏教伝来は本当に538年なのか」というような言説に疑いを持つようなケースである。もちろん、大学生ともなれば、球面上の三角形の内角の和は180度にならないこと、『日本書紀』や『元興寺縁起』など別の資料に基づけば別の年になることは、知っているであろう。
さまざまな資料を読み、現時点でのコモンセンス・公知の事実を調べた上で「巨人の肩に乗る」の精神で、「今現在〜と言われているが、本当かどうか検証する」というようなテーマは、論文として成立しうる。
この応用で、もう少し大学生にとって実現可能性の高いテーマ設定の方法がある。たとえば、「○年前の調査では〜と言われていたが、今現在、最新の状況を調査してみる」「女子大学生を対象にした調査では〜という結果になっていたが、男子大学を対象に改めて調査をしてみる」などのように条件を変えて「Aは本当にBか」検証する方法である。これでも十分に新規性・独自性があると言える。
「A=B∵C」の「∵C」に着目し、「なぜAはBなのか?」をテーマにする
不確かな事実や新しい現象、が成り立ちうる「条件」や「理由」について、論文にするものである。
たとえば、「なぜ地方都市の女子高生においてK-Pop人気は一層高いのか」や「なぜ夏の甲子園が中止になった年に高校生投手の投球スピードは上がったのか」というようなケースである。
興味深い事実や現象を見つけ、その条件や理由に「目星」が付けられて、「実証」可能であれば、新規性・独自性については申し分ない。
自ら問いかけて研究に値するテーマを決める
以下の問いを自分に問い、ここまで、マインドマップで広げ、さまざまな本を乱読して基礎知識を付けてきた「関心」を研究に値するテーマとして落とし込めないか、考えてみて欲しい。いずれも考えつかないようであれば、改めて、マインドマップと乱読に戻る必要がある。
- 自分だけが知っていて、他の人が知らない「物事(A)」はないか?
- 本当かどうか自分で検証できそうな「事実(A=B)」はないか?
- 不確かで興味深い事実について「理由(∵C)」の目星がつかないか?
本日のToDo
□新規性・独自性が研究に必要であることを理解する
□論文は論理的でなければならないことを確認する
□三段論法について復習する
□研究テーマを導き出す切り口を確認する
□研究テーマを決める